分かれと別れ
今日は2つのわかれ がありました。
ひとつは、学生時代含め、4年弱お世話になっていた先輩との分かれ。
もうひとつは、新人の時から3年間、担当させていただいた私の仕事人生において一生忘れることのない多系統萎縮症の患者さんとの別れです。
今日は、想いが溢れて溢れた1日でした。
新しい一歩を踏み出した先輩に心からエールと感謝をこの先もずっと、、送りたいです。
そして患者さん。
今日、家族さんと沢山お話しました。
本当に突然過ぎる出来事でした。
朝礼で聞いた時、嘘かと思いました。
昨日に限って遠目で見るだけで訪室しなかった自分を呪いました。今週の自分を呪いました。
いつかこんな日が訪れる事は分かっていましたが。
奥様、娘様が私の話をよく患者さんとしていたと。目を大きく見開いて笑ってくれていたと。奥様からは、「これからもずっとお世話になります。私が年老いた時、どんな状況でも私らしく冗談を言って笑わせて下さいね」と。
患者さんとの3年間は、色々な事がありました。
担当当初は、私の若さ故に全く瞼を開けてくれない期間もありました。私自身、胃が痛くなる程悩んだり、無力に感じる時もありました。
けれども毎日諦めずに訪室して挨拶をしてベッドメイクをしてOTさんと2人でリクライニング車椅子へ移乗し、リハビリ室でビートルズを一緒に聴いたりSTさんのリハビリにお邪魔をして次第に冗談やお話をして笑ってくれるように、お互い素で笑える関係になりました。
関係が深くなる程に病状も進んでゆきました
どうしたらこの方の想いを汲み取れる事が出来るだろうか。
ポジショニングはどうしたら楽になるのだろうか。どうしたら病棟に響くだろうか。どうしたら褥瘡は改善されるのだろうか。
いっぱいいっぱい悩んで寄本先生の神経難病の研修へ行ったり、違う部署にいた先輩のところへ駆け込んで相談したり、患者さんと家族さんやスタッフと一緒に色々な事を評価して予測して評価しての繰り返しでした。色々な事がありましたよね?。
排泄介助の時、レッツチャットが使えなくなった時、文字盤、透明文字盤を使う事を断念した時、ナールコールが鳴らなく鳴った時、押せなくなった時、車椅子に乗れなくなった時、お楽しみで飴を舐めて味を噛み締めた時、リハビリが来た時。あなたは何を思いましたか?
どうして呼吸器が外れないのかとの問いに対し、主治医や家族さんや看護師さんと話し合って私が覚悟してお話をした時、【もう帰ってくれよ】と言わんばかりに目を強く閉じたあなたの顔を私は今でも覚えています。
お孫さんに、「じいじの手をずっと握ってね。じいじの手、あたたかいでしょう。私ばかりじいじの手、握ってしまってごめんね。」
患者さんに、「あなたのこの手を私は必ず守ります。」と。
目を見開いてこいつは何を言ってるんだって顔をしてびっくりしたあなたの顔、今でも覚えてますよ。
どうして自分なんだと呪ったでしょう
同じ天井の景色を沢山みて嫌になったでしょう
思ってはいけないことと思ってしまったこと沢山あったでしょう
苦しい思いを沢山したでしょう
痛かったでしょう
かゆかったでしょう
食べたかったでしょう
飲みたかったでしょう
自ら手を握りたかったでしょう
奥様を抱きしめたかったでしょう
娘様の頭を撫でたかったでしょう
息子様と同職ながらの話を熱く語りたかったでしょう
私に突っ込みたかったでしょう
叫びたかったでしょう
話したかったこと伝えたかったこと沢山あったでしょう
少しでも、息抜きに気分転換になれていたでしょうか
仕事に生きて来たからこそ、ベッドメイクや接遇や環境設定や管理においてはかなり気になる事が多くて納得がいかないことも沢山あったでしょう
家族さんが面会に来るまで毎日沢山我慢をしたでしょう
私のエゴかもしれませんが、1日に1回以上、本気の笑いを取りたくてbedsideで本気のモノマネ歌ライブや覚えた漫才をしたのはあなただけです。(笑)本当に楽しかったです。これからも、自分と誰かに対して伝えてゆきます。
思い切った話をして一緒に泣いたり
私のばか話をして一緒に笑ったり
あなたにしか聞こえないように耳元でプライベートのお話を報告したり
家族さんと共に色んなお話をしたり
昨年、手術目的で転院する前に目を見開いて、思う様に筋が動かない状態で涙を流しながら「ありがとう」と口述してくれた事をこの人生において一生、忘れません。想いが触れ合ったあの瞬間を一生忘れません。
毎日、悩み続けて きっとそれに気付かれてもいただろうと思います。私の癖を見抜いていたでしょう。
私を含めたリハビリでの時間を楽しみにして下さっていたこと、心より感謝しています。
私は、想いに応える事が出来ていたのでしょうか。
さいごのさいごはお顔を拭くばかりでしたがかゆかったでしょうか。気持ちが良かったでしょうか。切なかったでしょうか。どうやったでしょうか。
学んだ事、あなたと共に向き合って来たリハビリでの時間などを私は一生忘れません。
毎年、桜の季節になるとじわりとふわりと
そして、はっと思い出すことと思います。
ひらり風にふかれて
何を思っていたのだろう
桜 花びらになり いつか 会いに行く
桜 花びらが舞う 一緒にみていた夢を
ふわり空に昇った あなたに送りたい
あなたに送りたい
ー半崎美子 サクラの歌詞よりー
「この季節を選ばれたのでしょうね」
「やっと、お家に帰れますね」
「奥様や桜の話、よくしましたね」
「おつかれさまでした。また明日も来ます」
〇〇さんにとって、仕事の時に1番大事にしていたことは何ですか?
「感謝」
悩む間も無く即答で か行に視線を向けたあの場面で
私はあなたを人生の先輩として心から尊敬をしましたし生き様といいますか、本当に大切なことを学びました。
心から、ご冥福を御祈り致します。